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インテリジェンスの草分け「007」

190pxsean_connery_1980_crop 初代ジェームス・ボンド役のショーン・コネリー

 生誕100年の話題が続いているが、もう一つの話題としてスパイ小説007シリーズで知られる小説家、英国のイアン・フレミング氏(1908~64)も生誕100年を迎えている。

独協大学教授・国際政治学者の竹田いさみ氏によると、今でも多くのファンを魅了して止まず大半が映画化されているフレミングの作品の中で「ロシアより愛をこめて」は故ケネディ米大統領の愛読書に選ばれたことがそうだ。

 007シリーズの独特の作風は、作者であるフレミングの生い立ちに拠って作られたと言われている。祖父は米国の鉄道に投資して成功した投資家、父は保守党議員で裕福な家庭環境に育った。そのため青年時代から英国の上流階級に接点を持ち、名門のイートンスクールを経て陸軍士官学校へと進んだ。しかし、その後は入隊せず、スイスとドイツに遊学し、ロイター通信の記者としてモスクワ取材を通じてスターリン体制の恐怖政治を垣間見ることとなり、これが彼のロシア観となってあの作品にも表れた。

 第2次世界大戦中は英海軍情報部の将校に抜擢され、対独情報戦に参加したことがきっかけで作家としての道を歩み始めた。近く公開される「慰めの報酬」という最新作の映画では、カリブ海の島国ハイチや南米のボリビアが舞台で、水や天然資源を支配して世界市場を撹乱する”闇の組織”との戦いがテーマになっているが、彼自身大戦中にはカリブ海のジャマイカ島に魅せられて、戦後はそこに別荘を建てて執筆活動の拠点とした。

 1952年から64年まで年1作のペースで、シリーズを書き上げていったが作品を見るとフレミングの実人生の縮図でもある。その底流には、彼のインテリジェンス(情報収集・諜報)に対する深い思い入れが貫かれていて、インテリジェンスは戦争を回避させるだけでなく、戦争を短期に終わらせ極小化させる有力な手段であることが分かる。とくにM I 6に代表される英国インテリジェンスの歴史は、16世紀のエリザベス女王1世の時代に大国スペインの無敵艦隊を破った快挙にも現れている。当時、女王の側近だったウォルシンガムが、英国国内と欧州大陸に情報網を張り巡らせ、敵の動向を逐次追うことで開戦のタイミングを正確に読むことが出来たと言われている。それは女王の肖像画の中にも読み取れる身にまとったガウンに施された”目と耳の刺繍”に現れた女王のインテリジェンスへの並々ならぬ関心度が物語ってもいる。

 007の”00”とは何ぞや、単なる数字のゼロではないそうだ。

 これは元来、女王への極秘文書に実際に使われていた特殊な記号で、女王の両目、すなわちアイズを表すそうで、つまり、「女王陛下お一人がお読みください」という意味が込められているとの事である。映画にもあった「ユア・アイズ・オンリー」なる言葉は、英国で実際に使われてきた「極秘」を指定する文言である。

 インテリジェンス無くして国家の生存や戦略はありえない。フレミングの作品には、そんな彼の強いメッセージが込められているが、ひるがえって日本ではどうなのだろうか。平和な世界に埋没している戦後の日本人には、理解できない人たちばかりかも知れない。

 今年は英国の作家、イアン・フレミングの生誕100年を記念して、ロンドンの帝国戦争博物館では特別展が開かれているとのことである。

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